公益財団法人金子国際文化交流財団、アジア、奨学金、

* * 留学生の研究内容の紹介

奨学生の研究内容の紹介について

 本財団では留学生が研究・勉学に専念できるよう、奨学金という形で応援しております。この「奨学生の研究内容の紹介」ページでは本財団の奨学金を受けた方のうち、大学院博士後期課程在学中あるいは博士号を取得された方の研究内容を紹介しております。

 以下、令和5年度奨学生のオウ・ショウチクさん(慶應義塾大学大学院)、テイ・カキさん(一橋大学大学院)、タイ・アランさん(上智大学大学院)、ソ・ブンウさん(千葉大学大学院)、オウ・ヨウトウさん(法政大学大学院)、リン・エンエンさん(東京外国語大学大学院)、イスラムMDハディウルさん(東京大学大学院)、ラティ・マドヤ・セプティアナさん(東京農工大学大学院)の研究内容をご紹介いたします。
 掲載期間は約1年間の予定です。

以下、寄稿時の所属でご紹介しております。

オウ ショウチクさんの研究内容の紹介         2023.12月

「中核犯罪の国内立法化に関する一考察」

令和5年度(2023年度)奨学生

王松竹(オウ ショウチク)さん

慶應義塾大学大学院法学研究科

博士後期課程4年

(2023.9月現在)

 私の研究対象は中核犯罪の国内法化である。
 ジェノサイド罪、戦争犯罪、人道に対する犯罪および侵略犯罪は、国際社会の共通利益を侵害する最も重大な国際犯罪である。これら四つの犯罪は、国際刑事裁判所(ICC)の対象犯罪であって、中核犯罪(corecrimes)と総称される。現在の国際社会では、国際刑法の間接的履行、すなわち国内法を通じた国際犯罪の訴追が重要性を増しているといえる。この意味で、中核犯罪に関する国内法を強化することは、理論的にも実際的にも非常に重要である。中国はまだICCには加盟していないが、中国は多くの戦争犯罪を規定するジュネーブ諸条約(一九五二年加入)と、ジェノサイド罪を規定する「集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約」(以下、「ジェノサイド条約」という。)(一九八三年加入)にそれぞれ加入している。これらの条約上の義務として、中国はジェノサイド罪と戦争犯罪を国内法化し、その訴追と処罰を担保するための国内法を整備する義務を負っている。現段階では、中国には人道に対する犯罪を国内法に転換する国際条約上の義務はない。しかし、責任ある国家として、中国は国際犯罪を防止し、処罰する義務がある。
 以上のような問題意識を踏まえ、本研究では、ジェノサイド罪、戦争犯罪、人道に対する犯罪の国内法化に中国刑法の現状と課題を検討する。まず、ジェノサイド条約およびジュネーブ諸条約の対象犯罪と中国刑法上の対応(刑法総則・各則双方の対応)をそれぞれ整理・確認する。これを踏まえ、日本に目を転じて、日本法にみられる戦争犯罪およびジェノサイド罪への対応、ならびに、ICC加入の際の国内法整備をそれぞれ確認し、中国との若干の比較検討を行うこととする。そして、中国における既存の国内刑事法システムでは、人道に対する犯罪に関する規定、現行刑法総則第九条に規定された普遍的管轄権を人道に対する犯罪に適用することを整理・確認する。今後中国が人道に対する犯罪を国内法に導入することを決定したときに備え、その具体的な立法方式について、ドイツ国際刑法典を参考にしつつ、中国の国情と刑事司法制度を考慮したうえで、中国に適した立法モデルを素描する。中国において、中核犯罪の国内法化を一つの研究課題とし、国内法制度を完備して国際犯罪を処罰するためにしかるべき貢献をしなければならない。
 この度は、金子国際文化交流財団奨学金のご支援をいただき、誠にありがとうございます。 この奨学金制度による皆様からのご支援のおかげで、私は研究活動に全力を注ぐことができています。最後になりましたが、ご支援をくださった全ての方々に心よりお礼申し上げます。
(事務局 奥沢文子) 中国せん。

 

テイ カキさんの研究内容の紹介     2023.12月

日本におけるソーシャルメディアを用いた危機管理―COVID-19感染症を事例として

テイカキ写真令和5年度(2023年度)奨学生

鄭 佳h(テイ カキ)さん

一橋大学大学院社会学研究科

博士後期課程4年

(2023.9月現在)

 本研究は、日本における社会的危機及び災害における危機コミュニケーションに着目し、危機管理の視点からソーシャルメディア情報をいかに利活用できるのかを明らかにしていく。
 研究内容は二つの方面から取り上げる(1) 情報の受け手側に着目した「ソーシャルメディアでの危機コミュニケーションに対する理解」と、 (2) 情報の送り手側に着目した「ソーシャルメディアを用いた公共危機管理」である。2020年より世界へ蔓延した新型コロナウィルス感染症危機(“COVID-19”)を研究事例としている。研究方法は主に内容分析、テキストマイニング、社会ネットワーク分析及び予測的分析の手法を用いる。
 長期にわたる感染症危機に向け、一般市民、専門家、公的機関と政府など多元的な社会主体間の危機コミュニケーションのあり方を解明していく。現実距離の壁を破れ、これらの社会主体を簡単に「つながり」をもたらす情報交換と危機コミュニケーションを行うツールとして、ソーシャルメディアに着目した。リアルタイムでの情報交換と、大規模な情報拡散が実現可能などの特徴を持ち、日常的なコミュニケーションはもちろん、危機状況に対する情勢感知に機能できる。緊急または災害時にインフラ情報を伝達するのにTwitter(2023年8月より“X”に変更)は有効な情報ツールとして活用されているため、Twitterをはじめとするソーシャルメディアよりデータ収集と解析を行う。
 社会全体は同一危機に臨んでいる時は、従来での管理体系や権力分布の角度のみから社会及び政治構造を理解するのが妥当的ではなくなる。それは、社会の流動性と伝染性が増加しつつあるからである。そこで、危機に受ける人々の感情、心理、行動、意見などの面から、身体的な理解を深めることが重要になってくる。
 本研究の独創性は、危機コミュニケーションでの政府側と市民側の両方向から、ソーシャルメディアを用いた「複合型」な公共危機管理の実現を検討することである。公衆衛生危機においてニューメディアを用いた情勢感知に有効性に実証研究を行い、多元的な意見から人々の欲求を聞き、特にネガティヴな感情表現がした危機コミュニケーションの拡散プロセスに対する理解は、社会的な危機がもたらす不安やパニック、誤情報などの拡散の防止と解消につながる。マルチステークホルダー間の危機対応関連研究を通じ、感染症危機そのもの及び危機コミュニケーションに対する理解が深めるのであろう。今後の危機管理のためのソーシャルメディアの情勢感知機能の有効化と、危機管理情報システムへの実装に役に立つと考える。

 

(事務局 奥沢文子) 緊急時に困るものの一つに誤情報が広がることがあります。それが解消されれば、社会への目に見える貢献となるのではないでしょうか。

 

タイ アランさんの研究内容の紹介      2023.12月

授業における個々の活動に基づいた知能教育システム

タイアラン 写真令和5年度(2023年度)奨学生
代 亜蘭(タイ アラン)さん

上智大学大学院理工学研究科

博士後期課程1年

(2023年9月現在)

 基礎教育においては、学生の数に比して教師の数がはるかに少ないため、指導プランが多くの場合画一的で保守的なものになっています。然しながら、学生には個人差があり、実践に適した学生や理論に適した学生などがいます。これにより、画一的な指導プランに適している学生とそうでない学生がいます。教師の数とエネルギーに限りがあることから、学生のことを把握していても、一人一人に合った指導プランを立てる時間を設けることは困難であります。その結果、画一的な指導プランに合わない学生の成績が悪化し、自信を失うことがあり、才能が大きく浪費されてしまいます。逆に、適切な指導プランがあれば、学生が内容を理解しやすく受け入れ、より良い結果が期待できます。これにより、学生の自信や学習への興味が高まります。本研究では、情報技術を活用して学生の日々のデータを分析することで、各学生の性格や習慣、行動の特徴を明らかにし、特徴に応じた指導プランを生成することを目指しております。これにより、教師の負担を軽減し、学生に多くの可能性を提供することが目的です。

1. 学生個性の違いによる行動の違いを示すデータを確認する。
 マルチソースから集めたデータの中には、性格の違いによる変化のあるデータもあれば、性格と相関するデータもあり、逆相関するデータもある。その後の研究の妥当性を確保するために、まずデータソースの妥当性と性格との関連性を明らかにする必要がある。

 

2.指導プランの分類
 本研究は理系の指導プランについてのみ行われます。文系・芸能・特定の教科を超えた生活指導の議論はありません。まず、指導プランを分類し、その後、分類に応じて各生徒に合った指導プランを推薦していきます。指導プランの推薦は、すべて指導プランの分類に基づいているため、適正な分類を確認することは本研究の目的の一つです。

 

3.指導プランと個性の適合性に関する研究
 健全な指導計画を立てるためには、指導プランと生徒の性格との相性を見極める必要があります。つまり、どのような指導プランがどのような個性に適応し、有益であり、どのような指導プランがどのような個性と相反するのかを見極める必要があります。本研究では、性格の指標としてヒックファイブを選択しました。五つの次元の性格は、開放性 O、誠実性 C、外向性 E、協調性 A、神経症傾向 N と定義され、それぞれの数値にはプラスとマイナスがあります。生徒も指導プランも単なるデータではなく、ニューラルネットワークで直接学習させることができないため、実際の人間の経験から両者の適性をトレーニングします。

 

4.指導プラン推薦システムの構築
 上記で得られた相関関係をもとに、指導プラン推薦システムを構築し、学生の日常データを入力した後、自動的に性格を計算し、そしてデータベースから関連する指導プランケースを自動的に見つけ出し、早めに多くの生徒に対する相性の良い指導プランを推薦します。最後に、システムの特性により、新たに入力したデータと推薦結果は新たなケースとなり、どんどん新しいケースを生み出してケースベースを拡大していきます。

 

(事務局 奥沢文子) 理想は全ての生徒に個別の指導プランを構築し実行することでしょう。現実的にはかなりの割合で1クラスに数名はいると言われている発達障害児等に有効なのではないでしょうか。どの学校現場でもすぐに使えるものになればどれだけ能力を伸ばせる子供が増えるかと思うととても期待してしまいます。

 

ソ ブンウさんの研究内容の紹介      2023.12月

伝統的生活用品「梳篦」の文化特質

-中国江蘇省常州市における現地調査に基づいて-

ソブンウ写真令和5年度(2023年度)奨学生
蘇文宇(ソ ブンウ)さん

千葉大学大学院融合理工学府 

博士後期課程3年

(2023.9月現在)

 常州市は、中国江蘇省の南部に位置し、上海と南京の中間にある2600年の歴史を持つ文化古城であります。多くの地域的な伝統工芸があり、その中で最も代表的なのが「梳篦( sh?bi :くしとすきぐし(の総称))」であります。常州梳篦は少なくとも370年の歴史がありますが、経済の発展に伴いプラスチック製品などの影響を受け、すでに衰退の危機に瀕しています。
 昔の中国では、梳篦が「櫛」と呼ばれていました。一つの言葉ですが、「梳」と「篦」の二つのものを表しています。日本の「櫛」も同じで、「梳かし櫛」と「梳き櫛」の二種類に分ける。残念ながら、日本ではまだ残っている「飾り櫛」とは異なり、中国の髪飾り文化は朝代の変遷の過程で衰退していきました。一方で、常州梳篦を代表とする髪を梳かす文化が形成されていきました。常州市の10万人以上の人口を支えていた梳篦産業がその例です。一見簡単な人工物であるように見える梳篦には、人生儀礼や祭りなど地域性を持つ精神的な面があり、それを明らかにすることを目指しています。
 梳篦と人の関係についてです。梳篦は人工物として、製造、販売、使用などの面で人と密接に関係しています。梳篦の制作は非常に複雑で、少なくとも百数十の工程が必要です。1人ですべてを完成することは不可能であり、職人は分業協力してこれらの工程を完成させる必要がありますが、協力する過程で様々な文化が形成されていきました。
 梳篦文化を氷山に例えるなら、現在私たちが見ているのは、水面の氷山の一角です。私たち伝統文化の研究者は、下に隠された文化的な意味を発掘し地域住民と共有し、共に地域振興活動を展開する必要があります。上記の文化は今の人々はもちろん、常州の人々にさえも忘れ去られつつあります。梳篦産業の衰退は現代工業の発展が原因であるだけでなく、文化的な自信の欠如も原因の一つだと考えます。この研究は、梳篦文化を再確認・再認識し、その情報を利活用して伝統的な梳篦工芸を振興することを目指しています。
 金子国際文化交流財団から2023年度奨学金をいただき、おかげさまで研究プロジェクトに誠心誠意取り組むことができるようになりました。心から本当に感謝しました。今後も、皆さんからいただいた気持ちを持ちながら引き続き頑張っていこうと思います。

 

(事務局 奥沢文子) 髪の汚れをとるためのすきぐしは現代ではほとんど使われなくなってしまいましたが、このような道具からでも文化や歴史を見ることが出来るのですね。

 

オウ ヨウトウさんの研究内容の紹介 2023.12月

相互接続ネットワーク構造の開発と性能評価

令和5年度(2023年度)奨学生
王耀東 (オウヨウトウ) さん

法政大学大学院情報科学研究科

博士後期課程2年

(2023.9月現在)

 私の研究テーマは相互接続ネットワークである。あらゆる大規模の計算が必要な状況で、スーパーコンピューターやデータセンターネットワークで計算するしかない、そのスーパーコンピューターやデータセンターネットワークの構築方法が相互接続ネットワークである。Dragonflyネットワークは、並列および分散システムの相互接続ネットワークによく使用される設計である。2023 年 6 月に公開されたスーパーコンピューターのランクリストは、多くのシステムが相互接続ネットワークとしてdragonflyトポロジを使用していることを示している。特に、トップランクの Frontier スーパーコンピュータは、dragonflyトポロジの slingshot-11 バリアントを使用して、1 秒あたり10^18 の浮動小数点演算を達成している。伝統的なdragonflyは、dragonfly(k, m, l) と表記される。ここで、mはグループ内のルーターの数、l は他のグループに接続された各ルーターの数、およびk は各ルーターに接続されたコンピューターノードの数である。各ルーターは、グループ内の他のm-1個のルーターと完全に接続される m-1 個のリンクを持ちる。各グループは他のグループに接続される ml 個のリンクを持ちる。グループ間も完全に接続されているため、合計で ml+1 個のグループがある。dragonfly(k, m, l)のルーター・ラディックスは l+k+m-1 である。大規模なdragonfly・システムを構築するには、多数の高ラディックスのルーターが必要であり、ハードウェアコストが増加する。

 

 ハードウェアコストを削減するために、本研究ではより柔軟なトポロジーである「Dimension Extended Dragonfly(DED)」を提案する。グループ内の各ルーターは、n次元の行列に配置され、同じ次元のルーター同士が完全に接続される。 nは次元を表すために使用され、DED内の各グループには m^n 個のルーターがある。DEDのコスト、性能、およびパケット遅延を評価している。結果は、DEDネットワークが伝統的なdragonflyやCascade(dragonflyの変異体)と比較して、n>2 の場合、より低いハードウェアコストを持つことを示している。また、DEDは古典的なdragonflyやCascadeよりも柔軟性がある。異なる直径とラディックスの組み合わせでシステムのスケールを選択するためのさまざまなオプションを提供します。シミュレーション結果は、DEDのパケット遅延がdragonflyやCascadeよりも短いことも示している。

 

 金子国際文化交流財団の奨学金を受け取り、心から感謝しています。このサポートにより、研究に集中することが出来るようになりました。貴重な機会を与えてくださり、感謝の気持ちでいっぱいである。これからも努力し、研究に励みたいと思います。ありがとうございました。

 

(事務局 奥沢文子) スーパーコンピューター並みの演算が気軽に利用できるようになれば世の中に役立つものの開発が進むのでしょう。有難くもあり楽しみでもあります。

 

リン エンエンさんの研究内容の紹介    2023.12月

中国語を母語とする日本語学習者における

漢語動作名詞を用いた機能動詞結合の習得研究

 

リンエンエン写真令和5年度(2023年度)奨学生
林燕燕(リンエンエン)さん

東京外国語大学大学院総合国際学研究科

博士後期課程2年

(2023.9月現在)

本研究では、「連絡をとる」、「期待をかける」のような漢語動作名詞と和語動詞で構成する機能動詞結合について、中国語を母語とする日本語学習者(以下、CJL)の習得実態を明らかにしたい。上級CJLにとっても機能動詞結合は習得の難しいコロケーションであり、『多言語母語の日本語学習者横断コーパス』(I-JAS)には「*誤解をとる」、「*解釈をあげる」などのようなCJLの誤用も見られる。CJLに対する効果的な指導法を考える上で、まずはCJLの機能動詞結合の習得実態を解明する必要がある。CJLは漢語動作名詞と機能動詞の共起関係をどの程度理解しているのか、また、機能動詞結合において和語動詞の機能動詞の産出にどのような傾向が見られるのか、またCJLにとって、習得しやすい・しづらい機能動詞結合の特徴を特定し、どの学習段階にどのような機能動詞結合を学習すべきか考察を行うことを研究目的とする。
 CJLは、一般的に漢字圏であるため他言語を母国語とする学習者に比べて日本語の漢語の習得に有利であるとされる。同様に、機能動詞結合を構成する動作名詞には漢語が圧倒的に多いので、母語で漢字を用いるCJLにとって習得が有利であると指摘されている。しかし、一方では、漢語に頼りすぎることにより、和語動詞の習得が十分に進まないという指摘もある。また、これまで、漢語語彙および和語動詞のそれぞれについては、CJLを対象とした習得研究が行われてきたが、主として漢語動作名詞と和語動詞で構成される機能動詞結合については、その習得状況が十分に解明されているとは言えない。言い換えれば、漢語動作名詞を用いた機能動詞結合の習得に関する研究は等閑視されているという偏向状況が日本語教育の現時点での課題の一つであると指摘できるだろう。
 したがって、先行研究で注目されなかった習熟度ごとの機能動詞結合への理解度、及びその産出傾向に焦点を当て、機能動詞の種類からその習得難易度を詳しく考察する本研究は、CJLの日本語習熟度別に相応しい機能動詞結合の導入順序や効果的な指導法について提案可能であり、従来の日本語教育のカリキュラムでは十分に手の届いていない領域にアプローチできる点に将来性があるといえる。

 

(事務局 奥沢文子) 日本語教育の観点から見るとなおざりにされていることがあったのですね。他言語を母国語とする方々にとって習得しやすくなるよう研究を進めて下さることを願っています。

 

イスラム MD ハディウルさんの研究内容の紹介      2023.12月

The C-terminal region of Stella (DPPA3) interacts with the SRA domain of UHRF1 to inhibit UHRF1 hemi-methyl DNA binding

イスラムハディウル写真令和5年度(2023年度)奨学生

Islam Md Hadiul(イスラム エムディー ハディウル)さん

東京大学大学院新領域創成科学研究科

博士後期課程1年

(2023.9月現在)

 

During cell proliferation, DNA methylation patterns are maintained by maintenance DNA methyltransferase 1 (DNMT1) during DNA replication. Ubiquitin-like, containing PHD and RING finger domains 1 (UHRF1) plays an essential role for maintenance DNA methylation by recruiting DNMT1 to sites of DNA methylation.
 UHRF1 is comprised of five functional domains, including a ubiquitin-like (UBL) domain, tandem tudor (TTD) domain, PHD domain, SRA domain, and a RING finger domain. The SRA domain recognizes hemi-methylated DNA, and the TTD-PHD domain cooperatively recognize the histone H3 tail, but the regulatory mechanism remains unknown.
 Recent studies demonstrate that DPPA3, a maternal factor required for oogenesis and early embryogenesis, negative regulates UHRF1 chromatin binding to safeguard DNA methylome during oogenesis. Although we previously demonstrated that mDPPA3 specifically interacts with the PHD domain of UHRF1, the detailed biochemical characterization of the mDPPA3-UHRF1 intermolecular interaction and the potential regulatory mechanisms remain to be elucidated.
 Here, we found that mDPPA3 also interacts with the SRA domain of UHRF1 and inhibits hemi-methyl DNA binding of UHRF1. Importantly, mutations in DNA binding residues in the SRA domain decreased mDPPA3 binding with UHRF1, suggesting that mDPPA3 targets the DNA binding surface in the SRA domain. Moreover, the C-terminal deletion mutants of DPPA3 reduced in its ability to inhibit UHRF1 and following maintenance of DNA methylation yet were still able to bind the PHD domain.
 Our data suggests that mDPPA3 utilizes a double-layer regulatory mechanism involving inhibition of both the PHD and SRA domain to ensure the suppression of UHRF1 chromatin binding.

 

(事務局 奥沢文子) 文系の私には専門的すぎて全く理解がおよびませんが、ハディウルさんの研究がすすみ社会に貢献することができた時、本財団の奨学金がハディウルさんを通して社会への貢献となっているといえるのではないでしょうか。

 

ラティ マドヤ セプティアナさんの研究内容の紹介      2023.12月

インドネシアにおける伐出作業を行う森林労働者の

労働安全衛生システム(OSH)改善への戦略

ラティ・マドヤ写真4令和5年度(2023年度)奨学生

Ratih Madya Septiana(ラティ・マドヤ・セプティアナ)さん

東京農工大学大学院総合農学研究科

博士後期課程3年

(2023.9月現在)

 

概要   持続的な森林管理(SFM)は、さまざまなステークホルダーの 価値観に基づいた相異なる森林利益を含むよう設計された概念 として受け入れられている(Berninger etal., 2008)。
 このような 複雑性はUNCED の「森林原則」でも言及されており、SFMは現 在および将来世代の社会的、経済的、生態的、文化的、精神的 なニーズを考慮すべきと明確に主張している(UN, 1992)。
 原則2dでは、林業従事者には森林政策の開発、実施、計画に積極 的に参加する機会が与えられるべきとある(UN, 1992)。この 定義は、森林が生態学的機能を提供するだけではなく、SFMプ ログラムの実施段階において重要な役割を果たす労働者の安全性を含む人間的・社会的側面にも配慮すべきことを反映している。
 林業は、多くの国で最も危険な産業部門の一つであり続けており、林業従事者の事故率の上昇、職業病の発生率の高さ、早期退職など、悲観的な傾向が世界中で観察されている。しかし、林業における高い安全衛生パフォーマンスが実現可能なことには明確な証拠がある。多くの科学者が、職場の安全性は倫理的な要請であるだけではなく、「dollars and sense:理にかなっていて、かつ、利益にもなる」ことを認識している。また、林業においては、そのことが天然資源を環境的に健全に管理、運用するための前提条件でもある。
 特筆すべきなのは、政府、企業、雇用者団体、労働者団体の各々が、それについてなにかしらの寄与を行おうと考えていることである。労働災害・疾病および危険な事象の記録、報告、監視のためのシステムにより、 安全衛生状態を向上させるための要求への適合性またはすでに実施した措置の有効性を測定することができるだろう。
 産業人間工学では、あらゆる活動における関連するすべての側面が人間の作業者に(安全、健康、生産性の面で)支援または奉仕すべきであることが前提とされている(ILO, 1998a)。
 以上のような状況が、安全でない不適切な森林事業を引き起こしてきた。一方、インドネシアでは実際に劣悪な労働条件につながっている不十分なOSHの存在が数年前より報告されている(Gandaseca and Yoshimura, 2001; ILO, 2010)。本研究の目的は、主に伐出作業を行う森林労働者の労働安全衛生システムを改善するための戦略を策定することである。

 

方法   森林政策における多くの研究は、施行ギャップを評価し、政策提言を策定するために学際的なアプローチを採用している (Nurrochmat et al, 2016;Sukwika et al, 2016)。この分析で使用したデータは、労働衛生関連の政策文書、FSC文書による労働安 全衛生の基準と指標、森林事業の手順、リスク管理に対する労働者の観点である。FSC の監査プロセスや安全管理面に関する情報は、経営者の代表者から得ている。
 リスク管理に関する林業労働者の認識は、フォーカス・グループ・ディスカッション (FGD) と、現場で起こりうる状況に応じて個別に行う半構造化インタビューによって収集される。本調査には、森林伐採、森林施業、森林管理、実務経験のある林業従事者(チェーンソーオペレーター、現場監督者、重機オペレーター、事務員、伐採トラック運転手)の代表者が多数参加している。

ラティ・マドヤ写真1 ラティ・マドヤ写真2 ラティ・マドヤ写真3

 

 

(事務局 奥沢文子) 夏休み期間に現地調査のためインドネシアに帰国されていたラティ・マドヤさん。東京は連日35度越えの酷暑でしたが、インドネシアは30度程度とのことでした。世界的に見ても東京は暑いという事を再認識させられました。

 

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